4-2.お差し支えなし、ご注文なし

 妙好人にはすぐれた言動が数多く残されていますが、お園さんという有名な妙好人には、次のような伝記が残されているようです。-以下、引用-出典(「妙好人と生きる」著者亀井鑛氏)

 伊勢の一婦人、自身の胸の始末にかかって、ちょっとも仰せを受け付けずに苦しんでおられた。此のご婦人に向こうて、お園さんが「私がきっと安心できる秘伝を授けるで、二、三年やる気はないか」と言うと、婦人は非常に喜んで「安心さえできることなら、如何なることでも致します」。するとお園さんは「お差し支えなし、ご注文なし」ということを二,三年言いづめにせよと言えば、婦人は喜んで帰り、二,三たつとまたやってきて言うには、「仰せに従って三日間朝から晩まで言いづめに致しましたが、何ともござりませぬ。胸の中は相変わらずおかしなものでございます。が、こんな心でも、ようございりますか」。お園さん曰く、「お差し支えなし、ご注文なし」。「それでも何ともござりませぬ、へんてつもない心中でござります」と言うと、お園さんまた「お差し支えなし、ご注文なし」。婦人はここに於いて凡夫そのままのお救いに初めて気がついて喜び勇まれた。
                             -引用終わり-

 お園さんの「お差し支えなし」「ご注文無し」というお勧めは、如来の慈悲について述べたものです。如来は私に対して何かを求めたり、注文することはない。如来のお救いにさし障りになるものは何一つ無い、ということですが、そのことが分かったので上記のご婦人は回心できたのでした。

 勘どころとは、無視できない重要な要点という意味ですが、如来の慈悲に気づくということが真宗においては無視できない重要なポイントであります。